2022/07/30 00:35

床本について


床本とは太夫が舞台で使う筆書きの台本です。



基本的に1ページにつき5行、1行につき8文字から12文字程度の大きさで構成されます。


勘亭流に似たような大きくぼてっとした文字を使います。


これは一般的に義太夫文字と呼ばれますが、書物や作品として進歩した字体ではなく、人形浄瑠璃の太夫が自分で舞台で使うために書くので、流派と呼ぶほどきっちりとしたルールはありません。

文字の横の朱色で書き記しているものを「朱」といい、これらは演奏上の注意ごとや節の種類などになります。

五線譜の音符のような役割はなく、音階を示しているわけではありません。


昭和の戦前あたりまでは各町にひとつは義太夫教室があったほど庶民の趣味のひとつだったこともあり、とくに明治期から昭和中期ほどにかけて印刷された簡易の床本(稽古本や五行本と呼ばれる)が販売されていたり、床本を手書きで代筆する本書きという職業があったため、戦火を免れたこの時期の床本は大阪の古本屋などではよく見ます。


また、床本とは別に丸本(院本)というものもあります。



昨今、ふたたびちらほらと義太夫教室の再興の兆しがあり、義太夫節がまた町中で聞こえてくるような大阪になってほしいと願っています。


私の床本は順次電子書籍データで公開していますので、ご活用ください。